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ハトシェプスト 古代エジプトの男になりたがった女帝と漫画『蒼いホルスの瞳』【女たちシリーズ002】

 もしも愛する我が子が自分と反対の道を歩んだとしたら、どんなに哀しいことでしょう。
    母としての自分を子供に理解してもらえなかったら、どんなに哀しいことでしょう。

 

 

    そういう悲劇は古代エジプトの頃からありました。

 

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 今回は女王ハトシェプストのお話です。

 

 このハトシェプストですが、第18王朝、紀元前15世紀の人です。
 日本では邪馬台国ができるはるか昔の出来事。

 

 三国志もなければ項羽と劉邦もまだ生まれていない時代。
 孔子だって釈迦だって生まれていません。
 それなのにエジプトではすでに17王朝ができていたのです。とんでもない話です。

 ちなみに、このハトシェプストですが現在漫画化されています。

 

『碧いホルスの瞳』という作品で、現在『ハルタ』という雑誌で連載中です。
 漫画喫茶で読んでみましたが、なかなか面白いのでおすすめです。
 ちなみに少女漫画家の山岸涼子先生もこのハトシェプストの短編を描いています。


 さて、そもそも紀元前15世紀ってどういう時代だったんでしょうか?

 

 ローマ帝国だってありませんし、ギリシャには都市国家つまりポリスは勃興していません。

 中国だと殷の時代です。
 エジプトではハトシェプストの時代のすこし後に預言者のモーゼが登場します。

 まだモーゼの十戒もない時代なのです。


 ハトシェプストの生涯

 

 ハトシェプストはトトメス1世の娘として生まれました。トトメス1世はなかなか優秀な王さまで、軍人としても優れていました。

 


 少女時代のハトシェプストについては、漫画『蒼いホルスの瞳』で生き生きと描かれています。男勝りで堂々とした女性だったのでしょう。もちろん漫画なので史実どおりかは疑わしいです。近代なら史料も豊富なので本当の性格に近いものが書けるでしょうが、なにしろ紀元前15世紀、三国志よりもさらに千年以上も前の話です。

 

 

 さて、ハトシェプストはトトメス2世と結婚します。

 このトトメス2世、父親はトトメス1世です。

 

 あれ? おかしい、と思うかもしれません。古代エジプトの歴史に詳しい方はご存知だと思いますが、エジプトの王家は近親婚なんです。


 トトメス2世はハトシェプストの弟だったのです。母親が違う異母兄弟です。
 
 だが、このトトメス2世は病弱だったといいます。その治世は3年だったとも13年だったとも言われています。短い人生だったのは間違いありません。

 近親婚を繰り返すと遺伝的に病弱な子が生まれやすいのです。王家というめぐまれた環境に育ちながらも短命な人物が多いのはそのためです。

 トトメス2世は死ぬ前に側室イシスとの子であるトトメス3世を後継者として指名します。

 ですが、息子が成人する前にトトメス2世が死去してしまいます。

 

当時のエジプトでは女性は王になれませんでしたが、他方で王の嫡出の長女に王位継承権があり、その夫が王になるという現在では分かりにくい制度になっていました。


 ハトシェプストの治世

 後の時代となると自ら男と宣言するハトシェプストですが、その治世は女性的で平和なものでした。戦争をせず、外交で平和な世の中をつくりました。

 だが、彼女の治世は善いものでも、彼女の人生が幸せだったとは言い切れません。

 

 息子のトトメス3世との仲はきわめて不穏なものでした。


 トトメス3世の治世は母親とは正反対でした。『エジプトのナポレオン』と呼ばれるほどその軍事的は優れていて、軍事的にたいへんな業績をあげました。
 そして母の死後、ハトシェプストに関する記録をすべて抹消しました。


’(これについては異説があります。エジプトの考古学者ザヒ・ハワス氏はハトシェプストとトトメス3世の関係は良好だったとの説を唱えています。)



『蒼い瞳のホルス』について

 

 

 じつは『蒼い瞳のホルス』についていくつかのブログで感想を読みました。

 で、こんな感想があったんですよ。

 

 

 つまらない、と……。(汗)

 

 

 そりゃあ、万人に受ける作品は無理だよな、そういう否定的な意見もあるよな、むしろ否定的な意見がある方が健全だよなと。そのブログをみてみるとその人は歴史好きなんですよ。それもコアなレベルの。

 

 

 ああ……。

 これって歴史好きの『あるある』なんですよ。(涙)

 

 

  歴史好きは『歴史小説』とか『歴史漫画』とかに対する目が異常なまでに厳しいんですよ。

 僕自身、何度テレビの前で時代劇をみて『これは違うだろう!!』と毒づいたことか……。(歴史好きのなかではそんなに重症ではないと思うんですが)

 この『蒼い瞳のホルス』は犬童千絵先生が描いている作品です。

 

 女性が描いている作品なので、その視線は当然なから女性視点になっています。その女性視点が『つまらない……』と書いたブロガーの方は気に入らなかったのでしょう。

 

 たとえば作中にでてくるトトメス2世ですが、暴力的で、男の身勝手な部分を具現化したような人物です。この記事ではトトメス2世のことを病弱と書いてしまいましたが、作品にでてくるとくらべると、

(こいつ、本当にトトメス2世かいな……)

 と、首をかしげてしまいます。

 

 この作品の一番の魅力ですが、 

 自分自身が女王になった気分が味わえる

 というところだと思います。

 

 女王になることの苦しさ、強さが味わえる作品で、そういう意味ではこの作品はおすすめです。’(↓この作品です。立ち読みして、気に入ったらお買い求めください)

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 なお、この漫画が掲載されているハルタという漫画雑誌には『乙嫁語り』も掲載されています。

 厳密には歴史漫画ではありませんが、こちらは本当におススメの作品です!!

 

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