アッシリア伝説の悪女 セミラミス【女たちシリーズ001】
すこしばかり学校で世界史の成績が良かったからといって自惚れてはなりません。
恥ずかしながらこのセミラミスという女性をまったく知りませんでした。いい気になってはいけませんね。教科書ばかりが歴史ではありません。このセミラミス、西洋ではかなり有名な伝説的な女性だそうです。
※ 画像はwikipediaより
以前、YouTubeでアッシリアに関する動画を上げたのですが、その時に調べた時点ではアッシリアにそんな女性がいたなんて知りませんでした。なんでだろうなぁ、と思ったのですが、このセミラミス、どうやら伝説上の人物で史実の人間ではないのです。だから図書館でアッシリアに関する本を調べても名前が載ってなかったわけか……。
余談ですが、Youtubeにあげた動画というのがこちらです。
なぜ世界史でアッシリアはアッシュールバニパルとニネヴェの図書館だけ覚えろと教えられるのか?【ゆっくり歴史実況】
ですから、厳密にはこの『歴史エンタメ遊園地』にふさわしい登場人物ではありません。歴史ではなくて神話なのですから。
じゃあ、なんで紹介するんだよ。と、お怒りかもしれません。
まったく未知の人物なので、覚えるために書いているのです。
ちなみにセミラミスは自分が想像していたよりもはるかに有名で、ロッシーニがオペラを作曲している。しかし、それ以上にゲームの影響が強いでしょう。『Fate』で残忍な女性として登場します。
さて、このセミラミスはいかなる女性なのか……。
伝説の悪女 セミラミス
伝承を信じるとするならば、その出生からしてすでに彼女の生涯は忌まわしい。
彼女の母デルケトーは、アフロディーテの怒りを買ったため女神の若い信者に情愛を抱く呪いを掛けられる。若い信者と関係を持ったことを恥じたデルケトーはその信者を殺し、シリアで生んだ赤子を岩砂漠に放置してアシュケロン(都市)の近くの湖に身を投げた。
ただでさえ生きる力のない赤子。それが砂漠に放置あっという間に死ぬのは火を見るよりも明らか。
しかし、不思議なことが起こりました。
なぜか鳩がやってきて赤子だったセミラミスの体を温めたり、ミルクやチーズまで運んでくれたのです。
どういうわけなのか、神の思し召しなのかわかりませんが、鳩のおかげでセミラミスは生きながらえることができたのです。やがてセミラミスは拾われました。人々はこの鳩の不思議さに感動して。
彼女は王室の羊飼いのシンマスに引き渡され、シンマスには子がいなかったので彼女を娘のように世話して「セミラミス」という名を与えました。
シリア語で『鳩』という意味です。
彼女が成長した頃、アッシリア王室の裁判所から来たシリア総督のオンネスの目に留まり、彼と結婚する。二人は首都ニヌス(ニネヴェ)で暮らし、ヒュアパテス(Hyapates)とヒュダスペス(Hydaspes)の二児が生まれた。オンネスはセミラミスの美貌と才能の虜となり、彼女の助言の通りに行動したので物事が全て上手くいった。
シリア総督のオンネスの目に留まり、彼と結婚する。
その美貌で夫をよく助けたといいます。
このセミラミス、すごいんです。服をつくれるんです。なんでも
(男女の判別が出来ないような形状で、熱を遮り肌の色を隠せるような服)
を作ったとか。
この時考案した服は利便性に優れていたため、後のメディア王国やペルシア人の間でよく使用されたそうです。
ところがニヌスという王がこの噂を聞きつけました。
ニヌスはオンネスに自分の娘ソサネスを妻に与えるので、変わりにセミラミスを渡すように脅したのです。
さらには、ニヌス王から同意せねば目玉を抉ると。
この残酷な脅しにすっかり肝を潰したオンネスは断ることもできず、さりとて もできず、首を吊って死んでしまいました。
残されたセミラミスはニヌス王と結婚します。
そして子供を産むのですが、ニヌス王は謎の死を遂げるのです。
一説には伝説上初の毒殺事件だと言われているらしいです。
まあ、毒殺される方もされる方ですけどね。
自業自得といいますか。
王ニヌスの死後、セミラミスが女王の地位につきます。
ニヌス以上の王になると誓ったセミラミスは、バビロニアに都市を建築することを決意して二百万人もの男性を連れて来ます。
二百万人はさすがにすさまじいですね……。
じつはこの二百万という数字をみた段階で、
(あ、これは作り話だわ……)
と、さすがに思いました。当時のアッシリアの人口がどのくらいか知りませんが、軍隊だと最大動員数がせいぜい5,6万。200万なんて北朝鮮のマスゲームだってそんなに集まりません。
セミラミスの野心はとどまるところを知りません。
領土を広げるため、インドへの遠征をくわだてます。
300万の兵士と20万の騎兵、10万の戦車を集め出陣した。
(兵士も300万もとか、兵站どうするんだよ……どうやって兵士を食わせるんだよと考えた俺は夢がないんでしょう)
ところがインド遠征の途中で大事件が起きました。
なんとニヌス王との息子であるニニュアスが宦官を使って陰謀を企てる事件が起こったのです。
これを聞いて、アモン神殿での神託を思い出しました。
「セミラミスは男達の中から消え、アジアで不滅の栄典を得る。そして息子のニニュアスが彼女に陰謀を企てるときが最期となる」
女王としての命運が尽きたことを悟りました。
息子を処罰せず、逆に国家に対して彼に従うように命ずると直ぐに姿を消した。
その後の彼女の行方は誰もわかりません。
ううむ……。
なぁんか後半はアレクサンドロス大王だよねぇ……。
後半はあまりにも話のつくりが綺麗すぎて、読んでいてちょっと感情移入しにくかったです。
これの元ネタは『歴史叢書』という本で、書いたのはシケリアのディオドロスという人物です。紀元前1世紀の人なので、アレクサンドロス大王の時代よりもずっと後の時代の人。
当然、アレクサンドロス大王のことは知っていたでしょう。
【織田信長】 漫画やゲームにみる織田信長。その存在は『善』か『悪』か!!
【織田信長】 漫画やゲームにみる織田信長。その存在は『善』か『悪』か!!
どんなに歴史に興味のない人間でも織田信長だけは知っています。
歴史に興味のない兄ちゃんでも織田信長の名前を聞くと、
※ 画像はwikipediaより
『カッコいい……!!』
目をキラキラと輝かせるのです。
説明不要ですが、信長は乱世の戦国時代を終わらせた英雄です。
でも、私は思うんです。
信長っていい人だったのか……?
ひょっとしてすごい悪い奴だったんじゃないの?
歴史愛好家の皆様には石を投げられるような発言かもしれません。
そもそも時は戦国。世は乱世。
殺さなければ殺される世の中。
親兄弟でさえ殺されるかもしれないのです。
騙まし討ちなど日常茶飯事。
『いい人』では生きていけるわけがないのです。
そんな信長ですが……。
信長の悪行とは……。
1571年、信長は反抗的な態度をとっていた比叡山延暦寺に兵を差し向ける。
当時の比叡山はただの寺ではなく、一大軍事勢力でした。
僧侶のみならず児童の首までことごとく刎ねたといいます。
九月十二日、叡山を取詰め、根本中堂、山王二十一社を初め奉り、零仏、零社、僧坊、経巻一宇も残さず、一時に雲霞のごとく焼き払い、灰燼の地と為社哀れなれ、山下の男女老若、右往、左往に廃忘を致し、取物も取敢へず、悉くかちはだしにして八王子山に逃上り、社内ほ逃籠、諸卒四方より鬨声を上げて攻め上る、僧俗、児童、智者、上人一々に首をきり、信長公の御目に懸け、是は山頭において其隠れなき高僧、貴僧、有智の僧と申し、其他美女、小童其員を知れず召捕り— 信長公記
とあります。いちおう信長公記は第一級の史料です。この文章を読んで引っかかったのは、
其他美女、小童其員を知れず召捕り
この一文です。
なんでお寺に美女がいたんでしょうかね……。
小童もそういうことなのでしょうか?
当時の仏教はかなり腐敗していたのは間違いありません。
○長島一向一揆
1574年、信長は一向一揆の門徒たちの降伏をゆるさず、女子供を問わず処刑した。
○荒木村重
謀反を起こした荒木村重の一族郎党の婦女子122人を磔、鉄砲、槍・長刀などで処刑、
さらに女388人男124人を4つの家に押し込め、周囲に草を積んで焼き殺した。
『信長公記』ではその様を「魚をのけぞるように上を下へと波のように動き焦熱、大焦地獄そのままに炎にむせんで踊り上がり飛び上がった」と書いてある。
(このほかにも安土城の侍女たちを皆殺しにしたという話もあります。
侍女たちが城を留守にして外に出かけたら折悪しく信長が帰ってきた。もぬけの殻になっていた城をみた信長は激怒、侍女たちを縛り上げた上で、全て殺したといいます。
しかも侍女たちの助命嘆願を行った桑実寺の長老までも殺したといいます。
ただし、実際にはそのような虐殺はなかったと桑実寺の住職がいっていたと遠藤周作のエッセイに書いてありました)
じつはいい人だった?
その一方で、信長は農民に対して重税をかけなかったといいます。
家臣に対してはたいへん厳しく絶対的な服従を強いた信長ですが、領民に対しては気さくな一面がありました。少年の頃は身分にとらわれず若い連中と遊ぶ日々をおくっていました。庶民と共に踊ってその汗を拭いてやったりしたこともあるそうです。宣教師ルイス・フロイスも信長のことを親切だと言っています。
信長を取り上げている漫画・ゲーム
やはり一番有名なのは信長の野望でしょう。
累計1000万本を売り上げた日本一有名なゲームです。
日本の歴史ゲームといえばまずこのシリーズでしょう。
最近は『無双』シリーズの方が有名になっていますが、昔からのコーエーファンはこちらの方のシリーズを楽しみに待っていることでしょう。
小栗旬主演で映画化もされました。
しかし、これは厳密には信長の漫画といっていいものか……。
漫画や映画を見た方はすでにご存知だと思いますが、この信長は『織田信長』ではないのです。
サブローという高校生が戦国時代にタイプスリップして、信長として人生を過ごすというもの。
ガチ勢の歴史好きには物足りないかもしれませんが、少女漫画なので歴史初心者でも楽しめる作品となっています。
抜忍伝説
どの漫画やゲームでも英雄として描かれている信長ですが、この『抜忍伝説』では信長は徹底的に悪人で、しかも矮小な存在として描かれています。
ちなみにこのゲームは1988年に発売されたゲームです。
つまり約30年前のゲーム……!!
いまの世の中でこれを遊ぶのはきわめて困難なことでしょう。
なにしろPCゲームで、その対応機種がMSXやPC8801、PC9801などのWINDOWS以前のゲームなのです。
ゲーム性はさすがに今の時代からみると、やや見劣りするようです。
余談ですが、このゲームを製作した飯島健男氏(いまは飯島多紀哉氏)は『信長の野望』を製作した光栄の元社員です。
自分の元の会社の看板ゲームの主人公である信長を倒すというのが、なかなかの因縁を感じさせますね。
ちなみに……。
伊忍道
光栄もちゃっかり似たようなゲームを作っています。
1991年のことなので、『抜忍伝説』の方が早いですね。
主人公である織田信長がこのときばかりは敵ボスになっている。
最後になりますが、一つとびきりの怪作を紹介したいと思います。
志野靖史先生が1994年から1997年まで『週刊ヤングアニマル』にて連載した作品です。
織田信長が総理大臣となって日本を改革する話なのですが、これがまたぶっ飛んでいる。
第一回の所信表明にていきなり『鳴かぬなら殺してしまえホトトギス』と中指たてて絶叫。選挙では国会議事堂を爆破。自分を肖像にした一千万円札を作るわ、米国の大統領クリリントンに政略結婚を申し込むわ、そのクリリントンが強硬な要求をつきつけたところ忍者をホワイトハウスに忍び込ませ、寝ている間に裃に着替えさせるなどまさに戦国時代のノリ。
円高による深刻な不況も、
この一言で片付ける。
ギャグ漫画の宿命でもありますが、後半になってパワーダウンしたのが残念でなりません。
なお、志野靖史先生ですが朝日時代小説大賞を受賞し、歴史小説家としてデビューしています。
本当に多彩な才能の持ち主なんですね。
信長は永遠に愛される。
毀誉褒貶ありますが、ほとんどのゲームや漫画で信長は好意的に書かれています。
戦国時代を終わらせた信長の改革精神は、武士の世の終わった民主主義である21世紀の現代でも歓迎されています。
織田信長はいつの世でも愛されることでしょう。