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オリュンピアス アレクサンドロス大王の母 蟲毒のごときディアドゴイ戦争の果てに【女たちシリーズ011】

 女は弱し、されど母は強し。

 

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 などと言います。今回はアレクサンドロス大王の母オリュンピアスについて。
 オリュンピアスはエピロス王ネオプトレモス1世の娘、マケドニアフィリッポス2世と結婚しました。
 そして19歳くらいのときにアレクサンダー大王ことアレクサンドロス3世を出産するのです。
 ちなみにアレクサンダー大王には妹がいます。
 名前はクレオパトラといいます。
 クレオパトラというと『あの』エジプトのクレオパトラを思い浮かべるでしょうが、あちらのクレオパトラは正しくはクレオパトラ7世といいます。
 同名の別人なのです。
 ちなみにアレクサンドロスもたくさんいるのです。歴史には同じ名前の人物がたくさん出てくる。
 このオリュンピアスは4人目の妻なのです。
 フィリッポス2世ですが、たいへんな君主です。
 マケドニアを一大強国に仕立て上げ、ギリシャの覇権をつかんだ人物なのですから。
 エパメイノンダスの家で教育を受けた。この時代に、ピリッポスはファランクス、エパメイノンダス考案の斜線陣などのテーバイ軍の陣形を学んだといわれている。
 そのフィリッポス2世と喧嘩をしてしまいます。
 そして国を追放されてしまうのです。
 息子であるアレクサンドロス3世のおかげでどうにかよりを戻すことができます。
 が、そのフィリッポス2世は死んでしまいます。
 暗殺です。
 フィリッポス2世には7人の妻がいました。
 そのうちは大半はすでにこの世を去っていて、そのうちの一人メーダは後を追って自殺しました。
 7人の妻のなかでクレオパトラ・エウリュディケという女性がいました。
 オリュンピアスはこの娘エウローペーと息子カラノスを死に追いやるのです。
 アレクサンドロス3世の覇業にとって邪魔な存在だからです。
 母の愛は強し、と言いますがここまでくると恐ろしいものがあります。
 息子アレクサンドロス大王は東方に遠征して偉業を成し遂げます。
 ですが、帰国途中に病に倒れて亡くなってしまうのです。
 偉大なるわが子を失ったオリュンポスの気持ちたるかいかほどだったでしょうか……。
 アレクサンドロスはあまりにも有名な遺言を遺します。
 その帝国を誰に継がせるかとの問いに、
「もっとも優れたるものを」と。
 この問いに答えるために、40年にもわたる凄絶な後継者争いすなわちディアドゴイ戦争が起こるのです。
 大王の死後、バビロン会議で大王の広大な領地は将軍たちに分割されます。
 そのなかでアレクサンドロス大王の母オリュンピアスも暗躍するのです。
 オリュンピアスが目をつけたのが、アレクサンドロス大王死後の
 騎兵の総大将となったペルディッカスでした。
 母オリュンピアスは、自分の娘クレオパトラとの結婚を勧めたのです。
 先ほど話にでてきたアレクサンドロス大王の妹です。
 ペルディッカスにとっては渡りに船です。
 大王の血縁者になれば、王の後継者となることだってできるのです。
 しかし、障害がありました。
 後継者(ディアドゴイ)の一人であるアンティパトロスの娘ニカイアに政略結婚を申し込んだばかりなのです。
 ですが、野心家のペルディッカスは大王の血縁になれるという、鴨がネギ背負ってやってきたようなオイシイ話を逃すつもりにはなれません。
 そこでニカイアと一旦、結婚して、かじった林檎を放り捨てるかのように即座に離婚しました。
 そして大王の娘と結婚しようとしたのです。
 当然、アンティパトロスは激怒、他の後継者たちとともにペルディッカスを攻めるのです。
 ペルディッカスは部下に殺されてしまうのです。
 つぎに台頭したのがアンティパトロスです。
 ですが、その際に病を得て死んでしまいます。
 このとき、アンティパトロスはその地位を自らの息子ではなく老将ポリュペルコンに譲ってしまうのです。
 これを恨んだのがカッサンドロスなのです。
 ディアドゴイ戦争の混乱のさなか、オリュンピアスはポリュペルコンの支持を得て、フィリッポス3世を殺害します。
 それをみてカッサンドロスが兵を率いてやってきます。
 オリュンピアスの篭るピュドナを包囲します。
 食料が窮乏したピュドナの住民たちは飢えに飢えて、死肉をあさる有様だったという。
 オリュンピアスは船で脱走しようとするのですが、捕まってしまいます。
 カッサンドロスは、オリュンピアスがこれまで殺してきた親族たちを連れてきます。
 親族たちはオリュンピアスを殺すよう頼みます。
 ところがカッサンドロスはオリュンピアスのもとにこっそりと使者を送るのです。
 船を用意しているから、アテナイへ逃げろと。
 これはカッサンドロスの狡猾な罠でした。
 オリュンピアスが逃げる途中で殺し、彼女に恥辱に満ちた死を与えようとの思惑でした。
 しかし、オリュンピアスはこれを断りました。

 あくまでも聴衆の前に身をさらし、自らの身の潔白を訴えるつもりだったのです。

 これを聞いたカッサンドロスは戦慄しました。

 彼女はアレクサンドロス大王の母親、もしも弁明すれば、聴衆は心変わりするかもしれない……。
 カッサンドロスはさっそく200の兵を差し向けた。
 しかし、オリュンピアスは王母。宮廷に押し入ったもののその威厳に打たれて何もできず帰っていった。
 しかし、彼女に肉親を殺された親族たちにはその威厳も通じなかった。
 オリュンピアスは石打の刑にして殺された。

 人生を権力をつかむことに一生を捧げたオリュンピアスは、命乞いを一切しなかったそうです。