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悪妻クサンティッペと向けられた嫉妬【女たちシリーズ007】

 悪妻

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 みなさんはこの言葉についてどう思いますか?

 

 三大悪女というのがいるそうです。

   クサンチッペは「世界三大悪妻」の1人として、西洋では知れ渡っています。 
三大悪妻はクサンティッペモーツァルトの妻コンスタンツェ、そしてトルストイの妻のソフィア・アンドレエヴナ、ということになっています。

 

 

 それにしてもなぜこの三人が世界でもっとも悪い妻なのでしょうか? 

 世界史には夫を殺した女はたくさんいるのに?

 

 

 ソクラテスについてはもはや説明不要でしょう。

 伝説の哲学者です。人類史に多大な影響をあたえましたが、夫として立派だったかどうかはわかりません。

 容姿は魁偉であまり美しくなかったといいます。はっきり言って醜かったです。しかし、人を引きつける不思議な魅力の持ち主でした。残念ながらその能力はクサンティッペには通じませんでしたが。

 

 ろくに働きもせず青年と語り合っているイメージが先行するソクラテスですが、ペロポンネソス戦争では重装歩兵として参加しています。古代ギリシャ人は我々とは生活が違いますからね。

 

 クサンティッペについてプラトンはこんなことを言っています。

 著作『パイドン』において、

「妻としても母としても何ら貢献をしなかった」

 と書いているのです。

 

 

 

 プラトンにあれだけ崇拝されていたのだから、ソクラテスが魅力的な人物だったのは間違いありません。とはいえ、ぶっちゃけ無職ですからねぇ……。当時、クサンティッペには3人の子供がいたはずで、育児子育てが大変だったはずなのです。

 だから、クサンティッペが怒るのも無理はないというのが通説なのです。

 しかし、ふと疑問に思うのです。

 なんでプラトンクサンティッペの気持ちがわからなかったのか、と……。

 プラトンソクラテスの死後、アガデメイアという学園を創設します。

 言ってみれば、大学の学長ですね。

 色々な人生経験だってしただろうし、ふつうに考えればクサンティッペの気持ちもわかるはずなんです。

 クサンティッペは15歳くらいのときに50歳くらい(おそらくは52歳)のソクラテスと結婚しているんです。古代ギリシャだと女性が15歳、男性が30歳くらいのときに結婚するのがふつうだったんです。ちなみにアリストテレスは男性の結婚の適齢期は35歳だと言っています。

 35歳差の夫婦って、まず僕の感覚でいうと普通じゃないですよ……。

 意思疎通できるのかなって……。

  ソクラテスは70歳くらいのときに死んだんです。だからそのときにはクサンティッペは35歳くらいになっているはず。

 ふと、思うんですよ。

 プラトンってソクラテスデキてきたんじゃないかなって……。

 当時、男同士の恋愛って古代ギリシャではわりと普通にありました。肉体的にはどうだったのか知りませんが、

 クサンティッペは幼い上に、古代ギリシャは男尊女卑の世界ですから、当時のアテナイの女性は家庭に押し込められていました。(例外はあります。アスパシアのような高級娼婦は男に負けず劣らず教養があった。それについては今後書きたいと思います)。

 

  教養のない女め……って嫉妬していた、その可能性は捨てきれない。

 

  自分こそがもっともソクラテスを理解しているのだと。愛しているのだと。

 その強烈な想いがクサンティッペを事実以上に悪妻に仕立て上げたのかもしれないのです。

 弟子のペテロ・パウロの伝道がキリスト教を押し上げたように、弟子のプラトンの著作がソクラテスをヨーロッパ最高の哲学者に押し上げたことは疑いようのないことでしょう。